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瀬戸内の歴史を受け継ぐ醤(ひしお)文化

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ここ岡山は、古墳遺跡が残り、古くからの歴史ある土地。

弥生時代には、吉備国(きびこく)が栄え、稲作を中心に農作が栄えた歴史と文化があります。

古く600年代頃(平安京の前)は、神様に収める年貢のような制度があり、多くの土地は、米や大豆を納めていましたが、ここ岡山の瀬戸内周辺では醤(ひしお)を納めていたと書き伝えられた記録が残っています。

 

海が近く塩が取れることに加えて、麦や大豆も育てていたことで生まれた醤(ひしお)文化。

醤を作ることは、土地の風土を生かした先人達の知恵でした。

 

※醤(ひしお)・・・味噌や醤油の原型とも言われる発酵調味料。

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醸す味噌

名刀味噌本舗の主力である、定番の合わせ味噌は麦麹と玄米麹を合わせて仕込んだ味噌。

 

名刀味噌本舗では、白味噌と玄米味噌で、目で見える特徴としても色が濃いものと薄いものに分かれています。

「単純に味噌を合わせたものですか」とお客様から聞かれるがことが多いのですが、原料から違う味噌なんです。

 

合わせ味噌は、仕込み段階で玄米と麦と合わせ、麹作りも一緒に行っています。
麹を合わせて一緒に発酵・熟成させ、味噌の仕込みでは大豆、麹、塩を混ぜます。

 

味噌作りでは、よく発酵の過程で「味噌にカビが生えて失敗をした」と言って辞めてしまう人がいますが、基本的に味噌は何も対策をしなければ絶対にカビは生えてくるものです。

 

簡単な対策方法としてよく挙げられるものには、上部に大量の塩をかけたり、高濃度の焼酎(アルコール)で防護してあげる事などがありますよね。

 

名刀味噌本舗でも、カビが出たら除去するという作業をしていましたが、

試行錯誤の末、4年ほど前から、古い出来上がった味噌を上に塗り、

上は古い味噌、下は新しい味噌という層にすることでカビの繁殖を抑えています。

 

それからは、味噌作りの失敗を減らすことができ、出来上がっている味噌の影響で新しい味噌の熟成も速く、味もより安定するようになりました。

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完成している味噌を上に塗ることで表面をコーティングして、

ちょうど親が、我が子を守るようなイメージですね。

 

どうしてこのような方法に行き着いたかというと、

発酵状態の味噌は、ほおっておいても味が変化することはあれど、決して腐ることはない、10年20年の時を経ても食べることができるからです。

 

元来、味噌は塩、麹、大豆を原料とし、塩が殺菌効果の役目を果たしています。

腐敗菌は、塩にとても弱くほとんど入ってくることができないため、塩の中で活動することができない。

 

塩分がある時は、低温状態に入ってこれる菌は乳酸菌くらいで、麹のブドウ糖をエサに乳酸菌が入ってきます。

乳酸菌は乳酸を生成し弱酸性に変化していき、ゆっくりと1~2ヵ月かけて味噌を酸性にしていきます。

 

その状態ができると、塩、乳酸の酸の効果で雑菌はより入りにくくなります。

そこに来て、天地返しをして乳酸の層を表面に持ってくる事で、より腐敗菌(雑菌)が入れなくなります。

 

この状況でも入れるのは、乳酸の中でも生きれる酵母のみとなります。

味噌作りの中でも味に影響を及ぼすのは優良酵母とよばれる酵母。

 

この酵母は、味噌の糖分やタンパク質を分解し、アルコール成分(味噌の香りの成分)を作ります。

 

アルコールへは雑菌は入ることができないのでここまで発酵が進むと全く腐らなくなるという仕組みです。

 

味噌づくりというのは、自然に存在する微生物の力を借りた人と、自然の協働作業なんです。


 

本来、味噌は冬に仕込むもの。

 

理由は、乳酸菌しか動けないのが低温状態で、雑菌の繁殖を抑えるためでした。

 

低温の時期に乳酸発酵を済ませ、その後天地返しをし、春頃に酵母が入ってくる。

四季のある日本の風土、自然の変化を生かした営みなんです。

甘口で単色。岡山の味噌の特徴

全国的にはさまざまな味噌がありますが、

山側と海側、北と南などその土地の気候や風土で味が変わりますよね。

 

岡山県は西の暖かい地域。

 

瀬戸内市は、海に面した街もあるので、新鮮な魚も入ってきます。

新鮮な魚を食べるので、あまり濃い味は好まれない。

甘い味が好まれる。

 

北に行けば行くほど、山間地では特に魚は手に入りにくいので、塩蔵や干物になったりします。

信州や長野だと少し辛口の味噌が好まれる。

 

地域によって全然味も違いますし、

スタンダードな原料も麦・米から、愛知だと豆を使った豆味噌。

地域によって原料も味も全く違うのが味噌の特徴。

 

岡山味噌の特徴の甘口は、麹を使う量が他の地域の味噌に比べて倍量くらい使うためです。

原料としては麹の方が高価なので贅沢な作りともいえます。

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麹が多いと、酵素量や殺菌能力が高くなるので、その分、塩分を少なく抑えて作れるのがメリットですし、

 

夏場は暑く、冬場は寒いという、自然に近い状態で作れるので、菌にとっても働きやすい環境でつくることができます。

味噌作り

まず、大豆を洗って吸水させます。一晩かけてしっかりと豆に水を吸わせます。そうすると質量は倍くらいになります。

 

次に、手で潰れるくらい柔らかくなるように2~3時間蒸します。

 

柔らかくなった大豆をミンチにかけて、

できた麹と塩と混ぜ合わせる。

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ここから熟成行程になるので、菌達の出番で麹たちが働いてくれます。

無農薬菜の花農法と岡山県の在来種朝日米

原料のお米は、完全無農薬の菜の花農法で作った玄米を分けていただいている。

 

菜花の花を咲かせてたものをたい肥にして、

色々な技術をつかいながら、全く除草剤や農薬を使わずに、朝日米というお米を作っている農家さんからわけていただいています。

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朝日米は、唯一の岡山県の在来種で、

一度も人工交配されていない珍しいお米なんです。

 

在来品種は他にもあるのですが、市場に出回る規模で作られているのが朝日米しかなく、岡山県でも県南でしか作られていない貴重なお米です。

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加えて、自分たちで無農薬で育てた大豆で味噌を仕込む予定です。

その味噌はまだ施策段階。

 

ようやく今年、自分たちの作った大豆で味噌が作れるくらい収穫ができました。

多分、まだ限定で200個くらいしか作れないんですけど。

 

こういう高品質な素材を使わせてもらうことで、

菌が入っていく速度が違うことを体感することもできますし、チャレンジですね。

 

やっぱり菌は正直なので、生き生きとしたものを好みやすいんだと思います。

麹屋の歴史

麹屋さんは、持ち寄ったお米を麹に加工してお金をいただくのが成り立ちです。

 

この地域の人たちは、自分で味噌を作っていて、家族や親戚の分を含めて、何十キロという量を作るんです。


 

岡山のお米の歴史でいうと、1922年頃に朝日ができて

1950年代にアケボノという品種ができました

 

朝日は背が高くなって倒木しやすいのが弱点だったので、改良されたんですね。

 

在来品種というのは植物の持つ野性味がすごくて、

自分達の身長よりも高く成長したりするので迫力がすごいんです。

 

生えているのを見たら驚くと思いますよ。

 

このあたりは平安時代からコメ作りをしていて

1300年くらい米を作っている。

大豆作り

もちろん地元で生産された大豆を使わせていただいています。

じゃないとここで味噌づくりをやる意味がないんですよ。

 

今、大豆を生産する人がすごく減ってきていて、

ここ数年は、自分達で大豆を作る取り組みを始めています。

 

ただ、味噌づくりの仕事をしながら栽培をするのは本当に大変なので

上手くいかないこともあるが3年目でようやく道筋が見えてきたところです。

 

農薬を使わずに在来品種を作ろうという取り組みで、

分からないことばかりで大変ですが、やりがいがありますし、

実際に自分たちが育ててみる事で、農家さんもより信頼してくれているということを肌で感じます。

 

自分達は農家さんは、絶対にやらないであろう手間をかけて選別しているので

そういった作業を通して、味噌づくりへの信頼をしてくれているのかもしれません。

 

農家さんにとっても、業者さんに卸すだけでは、

自分達で愛情を込めて育てた大豆が、どこで何に使われているかを知ることができないので、

何に使われているか分かるほうが良いからという事もあって、信頼関係が生まれてきましたね。

その年によって変わってしまうワインのような味噌

毎年の味の微妙な違いについては、嬉しいことに名刀味噌を購入してくださっているお客様は、理解してくださっているお客様が多いです。
 

味噌は生きているものなので、そういうものだよという事も知ってもらいたいですし、

どちらから言うと、本当は味噌は自分で作ってもらいたいと思っています(笑)

自分たちで作った材料を使って味噌作りをする。
岡山県の瀬戸内には、そういう文化が残っているんです。

 

色んな家庭で色んな違う味の味噌があることが面白いですし

地元の人でも、思ってもいなかった昔からの作り方をしていたりしていて、それは放っておくとなくなってしまうものなので、

おばあちゃんにならって作ってみようかという事も挑戦したりしています。

 

僕達自信も、祖父や父が残した作り方を元に

自分たちなりに、経験を積んで変化をさせながら今は作っているんです。

白味噌

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麹を多く使って、熟成期間は1カ月くらい。

 

白味噌は、熟成発酵までいっていないものもあり、

出荷前日に温度を上げて出荷するものもあります。

 

味の好みはもちろんありますし、白味噌は色が重要です。

 

白くするには

大豆の皮をむくとか

煮汁に色素が含まれているので煮汁を変えるなどの技術がありますが、

うまみは、煮汁の方に出ていってしまうので、

それを色だけのために捨てちゃうのはもったいなく、

僕達のやり方には合わないんです。

 

短期熟成だとあまりうまみもないのが面白みがないと感じ

うちでは、色は少々濃くなってもいいと判断して、一ヵ月くらい熟成をさせています。

一ヵ月という期間は、名刀味噌の中では一番短い熟成期間になります。

熟成期間が短いので、古い味噌を塗る作業もしていません。

 

実際に食べていただくと、お豆の味と甘味を感じていただけると思います。

自然が作っているお味噌

原料をどう生かせるか?

米のうまさをどう表現できるか?

大豆もそう。


 

僕らの仕事は僕らが作っているというよりも、

自然が作っているので、

余計な物を入れずにいかに美味しい物が作れるか?

その本質を表せるか?

そこの探求をずっとしています。

 

まだ結果は出ていないし、

これからもずっと続くテーマだと思っています。

 

それは創業当時からの目標で、

皆で改善点を出し合いながら常に良くしていく。

 

いまだに少しでも美味しくするために

ブラッシュアップしています。

大切にしている事

無理をさせない。

早く作らない。

 

10年前とかは効率ばかりを求めていたのですが、

今は、できるだけしたくないねって話になっていますね。

 

添加物や保存料を全く入れないのは当たり前というか、絶対にしない事という考えです。

 

世の中には知らないところで

表記しなくていい物とかもあるみたいなんですよね。

 

でも、自分たちは元々そういうものを使っていないし、そもそも使い方も知らないので。

 

今までもそうですし

これからも変わらないのは

添加物を使わないという事ですね。

メッセージ

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自分達は農家さんの大変さや、すごさを肌で感じていて、一緒に仕事ができることを誇りに思っています。

 

ゆくゆくは全てを地元の素材でつくりたいのですが、

自然が相手なので、いろいろな理由で、すべて岡山産にすることができない時もありますが、原料の産地は名刀味噌のホームページにも詳しく書かせていただいています。

できるだけ、岡山産のそれも狭い地域の素材にこだわって味噌を作りたいと思っています。

 

名刀味噌を知っていただいて、

その先に、農家さんが作った、お米や麦や大豆を知っていただくこと。

瀬戸内の豊かな穀物の文化を知ってもらい、

そこからさらに、瀬戸内という土地や人に興味を持っていただいて、実際にこの地に来ていただくことが、味噌作りを通じて伝えたい目標でもあります。

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